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人類の営みのためのアーカイブ

2020.01.13

2020.01.13

GAYA|移動する中心
Report / Article

レポート|サンデー・インタビュアーズ Vol.02

1月13日(月・祝)に「移動する中心|GAYA」プロジェクトの活動メンバー「サンデー・インタビュアーズ」の月例ワークショップ第2回が開催されました。今回の会場は「穴アーカイブ」プロジェクトの活動拠点でもある生活工房。第1部ではゲストをお招きして「語り手を探す」をテーマに考えました。

今回の参加者は初参加の方を含め7名。まずは自己紹介の代わりに、事前に課されていた課題「日曜日のあなたの1分間」を上映します。これは、2020年の最初の日曜日である1月5日の24時間のうち、任意の1分間をレモスコープで撮るというもの。この課題の背景には2つの理由があると企画者の松本は言います。それは、前回のワークショップで取り組んだレモスコープ(第1回のレポート参照)を用いることで、撮影者の視点の独自性が映像に表れるから。また、サンデー・インタビュアーズのみなさんの日曜日の過ごし方を映像をつうじて共有できるから。

「カメラを構える」ということが一見、主体的な行為に見えて、じつは意外と受動的なところがある。そう松本は言います。「カメラに何かが映り込むのを待つのと同じように、インタビューで話を聞いていると、相手の話が、ある風景として立ち上がっていくことがあります」。

生活工房・佐藤史治さんのお話──世田谷にまつわる展覧会から考える

課題の映像上映が終わると、生活工房のプログラム・コーディネーター佐藤史治さんをゲストスピーカーに迎えてお話いただきました。生活工房は1997年に開館した世田谷文化生活情報センター内にあり、2003年に2つの財団統合により設立された生活デザイン、舞台、音楽、美術、文学の5つの分野から成り立つ財団法人せたがや文化財団になりました。暮らしに関わる多彩な事業を展開し、デザイン、文化、環境などをテーマにさまざまなプログラムを実施しているユニークな公共の文化施設です。そのなかで佐藤さんが企画を担当する展覧会は、世田谷にゆかりのある人・モノ・活動を紹介しています。佐藤さんが近年手掛けた2つの展覧会について詳しくお聞きしました。

ひとつ目は「新雪の時代―江別市世田谷の暮らしと文化」(2019年1月16日〜3月10日)です。この展覧会は、東京空襲で焼け野原となった東京から、食糧増産を目的とする「拓北農兵隊」として北海道江別市に移り住んだ人々と、彼らが住む世田谷部落を紹介するというもの。2014年に北の〈世田谷〉の存在を知った佐藤さんが、江別市にある「北の世田谷美術館」の巡回展を生活工房の企画会議に提案。しかし2016年にこの美術館が全焼してしまったことを期に改めてリサーチを重ね、2019年1月に展覧会が実現しました。

泥炭地の暮らしを描いた絵画、入植者が書き残した文章の展示、江別市の市民劇団「川」が上演した『北の世田谷物語』の記録上映、入植者のトークイベント──。入植者自身の経験を重視したいと考えた佐藤さんが自ら現場に足を運び、暮らしと文化に関する資料と話をひとつずつ集めたと言います。現地調査での苦労について参加者から質問が挙がると、佐藤さんは「話は毎回思った通りにいかないものですが、現場にいる人にいろいろ教えてもらったり、助けられたりしながら、同時に並行して資料を調べて展覧会の企画書の内容を変えていきました」と応えました。

そして2つ目の展覧会は「プレーバック、プレーパーク! 遊び場をめぐる冒険」(2019年12月14日~2020年1月19日)です。この展覧会では40年前に世田谷区の羽根木公園の一画に誕生した子どもの自由な遊び場の歴史を振り返りつつ、世田谷の3つの市民運動(冒険遊び場、雑居祭り、自主保育)を取り上げています。羽根木公園で子どもたちが焚き火をしている不思議な光景を見たことがある人もいるかもしれません。『世田谷クロニクル1936-83』にも映像が収められている1979年頃、屋外の子どもたちの遊び場が減少するなか、プレーパークはその誕生当時から「自分の責任で自由に遊ぶ」を標語に掲げ、木のぼり、火おこし、屋台づくりなどの遊びを自由にできるスペースを提供しています。

トーク後半は実際に「プレーバック、プレーパーク!」展の会場に移動して佐藤さんのお話をお聞きしました。大きな滑り台(を模した什器)が目を引く会場には、プレーパークの歴史を物語る資料が多数展示されており、冒険遊び場に欠かせない存在であるプレーリーダーのインタビューも上映されています。佐藤さんの説明に耳を傾けながら、世田谷という地域の特徴をみんなで考えていきます。

生活工房プログラム・コーディネーター・佐藤史治さん

「誰」に話を聞くのかを考える

休憩を挟んで、ワークショップは第二部へ。佐藤さんは展覧会をつくるために、さまざまな資料にあたり現地に足を運んで語り手に出会いました。今回のワークショップではサンデーインタビュアーズの語り手の姿を具体的にイメージしてみます。2つ目の課題は「『誰』に話を聞くのかを考えてくる」です。実際に話を聴くことができるか否かを問わず、「話を聞いてみたいな」と思う人物を想像してみました。さて、みなさんは誰に話を聞きたいと考えているのでしょうか。

挙げられたのは、渋谷の神社を守ろうとするちょっとコワモテの人たち、冬の東京の工事作業員、東松島市の語り部のボランティア、外遊びについて語り合う高知県の高齢者、「青バス」について知っている人、六本木ヒルズの地主、千葉県に住むおじいちゃん、水木しげる、江東区の庭師、世田谷の母子支援に詳しい人──。参加者のそれぞれの関心から、さまざまな語り手の姿が浮かび上がりました。

ここで企画者の松本がプロジェクトの趣旨をあらためて整理します。「移動する中心|GAYA」の出発点はアーカイブです。アーカイブは記録と記憶を保存することを意味していますが、GAYAは「アーカイブを書き換える」ことに取り組んでいると松本は言います。たとえば、世田谷の住民が撮影した8ミリフィルムを収集・公開・保存・活用する活動を進めてきた「穴アーカイブ」。「穴」とは8ミリフィルムに空いている小さな物質的な穴(パーフォレーション)でもあり、それは必然的に記録することのできない部分(記録の穴)でもあります。穴アーカイブはフィルムに残された「記録」とそこに写り込んでいない記憶の2つを扱うプロジェクトです。

GAYAは穴アーカイブの取り組みをさらに派生させ、映像とその語りを世田谷区内に届けるための移動するアーカイブセンター(中心)を目指し、その仲間づくりを行います。提供された8ミリフィルムの映像が区内をぐるぐると巡って、提供者のもとに思いがけない視点と話が還ってくる。そうすることで、私的なホームムービーは地域や世代を超えた共有財になるのではないか、と松本は話します。

ワークショップの終盤では、話を聞くことについての難しさやとまどいについて、参加者から意見が交わされました。

──目的があれば話を聞きに行けるのですが、何もない状態でどうしたらよいか不安です。どう名乗ればいいのか、また録音機を出すタイミングも心許ないです。

──なんらかの成果物を想定して話を聞くのでは目的が絞られてしまうので、目的がなくともいろいろな話を聞いてみたいです。そのきっかけをつくれるようなフレーズがあるといいなと思います。

──まずは親しい相手から話を聞いてもよいと思いますが、語り手にたどり着くためのリサーチも重要なので、そのプロセスを共有するのも面白そうです。

今回のワークショップでは、「語り手を探す」ことを想像しながら、インタビューの難しさやその醍醐味が浮かび上がりました。さまざまな背景をもつ語り手から、私たちはどのように話を聴くことができるのでしょうか。次回の月例ワークショップは都市社会学者の山本唯人さんをゲストにお迎えし、「語りを聴く」をテーマに参加者のみなさんとともに考えます。

レポート=ありな[AHA!]

posted on 2020.06.06

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