サンデー・インタビュアーズ

サンデー・インタビュアーズ

わたしの場合

土田悠

土田悠2019–2022年度メンバー

1981年生まれ。2012年に新潟から東京・世田谷に転居し、区内の福祉施設に介護職として就職。結婚と子育てをして10年ほど世田谷で暮らす。以前から古いことやモノに興味があり、勤務先の利用者さんが語る昔の話をとても面白いと感じている。2019年からサンデー・インタビュアーズに参加している。

2021年度の〈きく〉

No.66『理容店2』02:58No.66『理容店2』02:58

いつもは勤務先である福祉施設の利用者さんに話を聞くことが多いのだが、今回はたまたま下北沢の道で知り合いの方とばったりと出会い、後日テレビ電話でインタビューをした。その方は下北沢に長くお住まいだった。映像が撮られた昭和44年頃、彼女は当時高校生で、写っている路地をよく行き来していたそう。この通りには「つくしや」というケーキ屋さんがあり、そこでは喫茶もやっていたのでよく行っていたとのこと。映像に写っている丸一呉服店の話も聞くことができた。ここは現在、小田急線の地下化工事のため移転。今その場所は駅前広場になる予定の道路になっている。実際に話を聞いて位置関係がよくわかった。

ワークショップを振り返って

私は「世田谷クロニクル」を使って職場の高齢者の方にお話を聞くことが多かったのですが、今回は実際に撮影された場所に行ってみました。映像と今の風景を比べてみると、時間のながれが感じられます。電信柱とか、当時の痕跡がないかを調べてみたんですけど、おせんべい屋さんのシャッターくらいしか見つけられなかったんです。「見つからない」というのは、時代の移ろいということもあるし、東京や世田谷だからなのかな、とも思いました。ワークショップでは、国籍や年齢、いろんな背景の人と話せたのが楽しかったですね。5歳の僕の子どもに話を聞いてみるのもおもしろいかもしれません。

2022年度の〈きく〉

No.84『ボロ市パレード』00:12No.84『ボロ市パレード』00:12

私のパートナー(妻)は世田谷の出身です。区内で行われたボロ市のパレードや、校庭での予行演習の様子が映る『ボロ市パレード』の映像。その撮影当時、彼女は小学校3年生でした。映像を見てもらったところ、なんと知り合いの人が映っているとのこと。映像を見ながら当時の話を聞かせてくれました。「冒頭でくるりと回る子たちはバトントワリング部」、「マーチングバンドのうしろを、統一した白い服で歩いているのがリコーダー隊。演奏が得意でない子(たいていは男子)はプラカード持ち」。当時は40人で4つのクラスでしたが、パートナーの次の年から3クラスに減ったという話も聞きました。

No.84『ボロ市パレード』02:46No.84『ボロ市パレード』02:46

ジャケットを着た男性の姿がアップで映ります。パートナーによれば、彼は音楽の先生で、全学年の授業を担当していたそうです。卒業アルバムを見ながら話を聞かせてくれました。同じ映像を世田谷に住んでいる義母(70代)にも見てもらうと、ボロ市パレードについて聞かせてくれました。「パレードの衣装は父兄が手作り。桜小学校の4-6年生の希望者が鼓笛隊に入る。6年生は全員参加で鼓笛パレードをする。他に桜木中学校の金管楽器もパレードに参加する」、「桜小学校は建て替えたので、ここに映っているのは古い校舎。校庭のけやきの木はまだある」。

No.84『ボロ市パレード』00:14No.84『ボロ市パレード』00:14

「はじめのほうに出てくる女性、私の知り合いだわ」と義母は言いました。映像に映っている場所が地元だと「ここ知ってる!」「この人知り合い!」と、話が盛り上がります。「世田谷クロニクル」の映像を通して、家族の会話が生まれるのか。帰省のタイミングにあわせて、新潟に住む母にも見てもらいました。母は新潟の生まれで、世田谷にあまり馴染みがなく、『ボロ市パレード』の映像から会話を引き出すことは難しかったです。別の映像では、角巻(かくまき)のようなものを着ている女性が映り、それを見てオレンジ色の角巻を祖母が着ている様子を聞かせてくれました。

ワークショップを振り返って

「そうそう、これはね…」と嬉しそうに語るお年寄りの顔。サンデー・インタビュアーズを振り返って一番に思い出すイメージです。私は介護施設で働いていて、世田谷クロニクルに掲載されている8ミリフィルムの映像を、レクリエーションの時間に使っています。そこで普段は聞かれないお年寄りの発言や思い出に触れることがあります。出てきた発言や聞いた情報──雪だるまの顔は炭団(たどん)を使っていた、とか──を、すぐにメンバーに伝える。そこでのリアクションが楽しみだからです。映像を見て、思い出を聞き、メンバーに共有する。そんな循環ができ、一緒に興奮してくれる仲間に出会うことができました。

ワークショップ内での発表をもとに、その一部を抜粋して事務局(AHA!)がまとめました。ライターの橋本倫史さんによる〈きく〉のドキュメントをnoteに掲載しています。
「ICレコーダーは使わずに話をききました」──土田さんの発表